青ベタ君の読書日記📖👓

読んだままに綴ってゆきます。

「我らが少女a」高村薫

  毎日新聞出版、2019年7月20日発行

いつもとは違う雰囲気のお話にチャレンジしたい。と思う方にはお薦めです。

 

12年前に起きた未解決事件。ひときわ冷えるクリスマスの早朝、公園で写生中の元美術教師の女性が殺害された。そして現在、事件の関係者の一人だった女性が、些細な事で同棲相手に殺される。男性が取り調べ中に語る被害者。女優志望でちょっと変わっていた。その彼女が、殺人事件現場から拾ったという絵の具のチューブを一つ見せられた事がある。という言葉から、特命捜査対策室が動き出す。果たして彼女は少女aだったのか?

初読の作家さんです。合田さんも知りません!ごめんなさいm(__)m長かった!536ページ!この厚さの作品にありがちな、とにかく端から端まで細かい字で、みっしりと紙面が埋めつくされております。読了まですっごく時間がかかりました。ストーリーそのものはさくさく進むミステリーではなく、事件の関係者らがバラバラになったパズルのピースをはめ込むように、事件当日の記憶を手繰り寄せようとして行くお話ですね。12年もたつたのに事件から解放されていない人達。なかでもADHDの男性の目まぐるしく、くるくる変わっていく頭の中の風景描写が圧巻です。

美術教師が定年後、開いていた絵画教室(彼女の家)をトロンデーン城、彼女をそこの魔女に例え、ゲーム好きな彼は、事件後『城がどうなつているか気になって来てみただけです。』被害者宅に侵入容疑で逮捕されてしまいます。すぐに釈放されますが、彼の警察官の父親はそれがもとで辞職します。

そして事件解決の決め手となつたのは、彼が父親に取り上げられていた、当時の携帯の600枚にも及ぶ写真。そこに写っている風景、人々。その日の自分が甦る。関係者の一人が思い出した最後のピースがようやくピタリとはまり、全てが繋がります。

文体は精巧で、当事者達に事件が及ぼした、静かなさざ波のような余波が丁寧に描かれていますね。事件解決後の最後のオチにはちょっとびっくりしました。

 

こちらはご紹介本📕

「ソロモンの偽証」2013年本屋大賞7位。

雪の降り積もったクリスマスイブの朝、校舎の屋上から転落死した男子中学生の遺体が発見される。自殺?殺人?生徒達が自ら真相を明らかにしようと動き出します。「我らが少女A」を読んでいて思い浮かんで来ました。特に1巻は夢中で読みました♪興味のある方は、こちらもぜひどうぞ。

ソロモンの偽証、宮部みゆき、新潮社

                    1巻、2012年8月24日発行

                    2巻、2012年9月21日発行

                    3巻、2012年10月12日発行